経営学部講演会2005
これからの経営戦略  名古屋が発信するトレンド
2005.11.18更新
 
平成17年11月5日(土) 日本経済新聞社名古屋支社
●主催:愛知産業大学経営学部 ●後援:日本経済新聞社名古屋支社広告部

 愛知県岡崎市に学舎を構える愛知産業大学。これからの中部地域の発展のために人材育成を行っている学びの場として、このエリアの活性化に貢献していくことは重要な役割であろう。今回の講演会は、そうした考えに基づいて開催された。テーマは、近年活況を呈する名古屋の元気を持続させるために、これから何をしていくべきか。それぞれの分野のスペシャリストからは現状の分析、そして未来への提言が多く語られた。

第1部 講演会「質の高いマーケティングからトレンドは生まれる」
●講師:平舘 美木氏(株式会社Hime & Company)
 マスマーケットが存在しなくなったと言われて久しい。インターネットや電子メールが日常のコミュニケーションツールとして定着したいま、ワン・トゥー・ワンのマーケットというのも視野に入れなければならない時代となった。企業の販売戦略、ひいては経営戦略を構築する際に、どんな人々をターゲットにしていくかが非常に読みにくくなっている。そうした状況の中、一人の女性が構築した会員組織が注目を集めている。2002年に“ヒメクラブタウン”というホームページを開設し、いまではそのサイトを通じて集う約2,500人もの女性たち“ヒメクラブ”を主宰する株式会社Hime & Companyの代表取締役、平舘 美木氏である。
講師:平舘 美木氏

 このクラブの目的は、女性をターゲットとする商品やサービスのトレンドマーケティングを専門に行うこと。ヒメクラブ会員たち一人ひとりが目利き役となり、企業やショップが発信する様々なモノやサービスの評価を下しながら、真に価値あるものを紹介していく。いわば、インターネットを通した口コミである。平舘氏は、どんな女性を会員にするかが一番のポイントという。まず挙げたのは、あらゆる方向のトレンドに敏感なことはもちろん、聞きかじりではなく、実際に体験している人。また、タレントのように手が届かない世界にいる女性ではなく“周りの人が真似したいと思うような普通の女性”であることが重要と語る。「あちこちに顔を出している彼女が良いと言っているのだから、きっと間違いない」という情報は、絶えず他の人との差別化を図りたいと考えている女性たちにとって何より強い味方になるわけである。
 バブル崩壊後、長く続いた不況期を経験した人々は、例えばモノを購入する場合でも非常に厳しいモノサシを持っている。しかし、所得は堅実にストックされ、伝統あるブランドが変わらない人気を得ているように、良いものにはお金を払うという状況は確実にある。重要なのは、どんな形でモノやサービスの価値を伝え、購買にまで結びつけるか。いま様々な企業が模索している課題、その答えの一つがここにあるのではないだろうか。
第2部 パネルディスカッション「全国に発信する名古屋ラシイとこれからの経営戦略」
●パネリスト:平舘 美木氏(株式会社Hime & Company)
:品田 裕司氏(株式会社三越 名古屋カンパニー ラシック店長)
:内田 俊宏氏(株式会社UFJ総合研究所 エコノミスト)
●コーディネーター:堀田 友三郎(愛知産業大学経営学部教授)
 名古屋が元気!というのは衆目の一致するところ。事実、セントレア(中部国際空港)には数多くの人々が訪れ、9月に閉幕した愛・地球博は、事前の予想を大きく上回る2,200万人超の来場者と、7兆7,000億円(万博協会・UFJ総合研究所の共同試算)もの経済効果をもたらした。ではなぜ名古屋が元気なのか。その特性は何か。また、これから名古屋はどうなっていくのか。3人のパネリストによってそれぞれの意見が語られた。
平舘 美木氏

品田 裕司氏

内田 俊宏氏

堀田 友三郎
地域のために、地域ならではのプログラムを用意できる。それが名古屋の強みである。
 元気な名古屋を象徴する事例として女性たちのファッションが挙げられる。有名ブランドの洋服やバッグ、アクセサリーなどでオシャレした彼女たちは“名古屋嬢”とも呼ばれ、ファッション誌にもたびたび登場する。女性をターゲットとしたトレンドマーケティングを行う会員組織“ヒメクラブ”を運営するHime & Companyの平舘 美木氏によれば、良いものをじっくり観察し、本当に価値があると判断した上で購入する名古屋の女性は目利き力が高く、その価値基準は全国的なトレンド形成でも大きな役割を担っているという。そんな名古屋のファッションシーンに平成17年3月登場したのが数多くの専門店が入る“ラシック”である。このテナントビルを運営するのは、実は三越 名古屋カンパニー。場所も三越名古屋栄本店に隣接する。店長である品田 裕司氏は、もっといいモノに囲まれて、もっと素敵な暮らしをしたいと考える名古屋、さらには周辺エリアの人々に来てほしかったから、年齢によるターゲットのセグメントはしなかったと語る。三越の名前をはずすことにこだわったのもそうした理由からである。
 オープン以来、多くの女性たちが訪れるこの“ラシック”に代表されるように、エリア特性を活かしながら、個人に対して特別なプログラムを多数用意できるのが名古屋の強み、と語るのはUFJ総合研究所の内田 俊宏氏。この地域をよく知る民間企業が先導役となり、個人のニーズに企業の経営戦略としてきめ細かく応えた結果が、購買力や動員力となって現れていると分析する。まさに小泉政権が推進する政策のモデルケースエリアである。

高い潜在能力を、いま以上に活かす、伝える。それが名古屋の未来の鍵を握る。
 コーディネーターである愛知産業大学堀田友三郎教授は、モノの売り手にとって重要なのはプロダクト、プライス、プレイス、そしてプロモーションの4P、そして買い手にとって重要な価値はカスタマーバリュー、コスト、コンビニエンス、そしてコミュニケーションの4Cであるという。名古屋がこれからも現在の成長を続けていくためには欠かすことのできないモノサシとなる。元来、堅実な暮らしぶりで知られ、純貯蓄率も東京の約1,200万円、大阪の約900万円に対して名古屋は約1,500万円、持ち家比率も約80%と東阪より5〜10%高い土地柄。個人消費の潜在力はかなり高いものがある。また、内田氏はトヨタ自動車をはじめ、ものづくりを得意とする歴史ある企業が多く集まるとともに、独自性あるベンチャー企業も次々と誕生している現在、こうした名古屋らしさをどう展開していくかが今後の鍵を握ると語る。中日ドラゴンズ落合監督のオレ流采配に例えて、堅実かつ大胆な施策が名古屋の未来に効果を発揮すると読む。また、平舘氏はマーケティングの観点で言えば、味噌煮込みうどんや手羽先などが名古屋の味として全国でも人気を得たように、名古屋がずっと守り続けてきたモノやお店がこれからも流行する可能性はかなり高いという。堅実に守り、しっかり育ててきたものだから、その質の高さはかなりのもの。強いて言えば4Pの内プロモーション、つまりその魅力をいかに伝え、広めていくかがやや弱い点をクリアすることが課題と論じた。
 いま名古屋は愛・地球博が終わり、祭りの後を迎えている。名古屋の元気を本物の力にしていくために、企業の経営戦略がまさにいま問われている。
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