宇野 勇治 准教授

宇野 勇治 准教授
都市・建築環境学
- ウノ ユウジ
- 名古屋工業大学大学院博士課程修了、博士(工学)。同大学大学院VBL講師を経て現職。宇野総合計画事務所 主宰。都市空間、建築室内の温熱環境評価、環境デザインに関する研究を専門とする。日本建築学会建築設計競技最優秀賞、日本生気象学会研究奨励賞など受賞。
設計事務所に就職後、環境に配慮する建築に対して興味を持たれ、大学院に進学。在学中に設計事務所も開設され、現在は本学で教鞭を執る傍ら、実際に建築物もプロデュースしていらっしゃいます。建築を通して社会の役に立ちたいとおっしゃる先生のお話を伺って、住宅というものが地球環境だけでなく、社会のあり方、家族のあり方、人間本来のあるべき姿など、周りの環境といかに密接に関係しているかを考えさせられました。
- 先生のご専門である建築環境学について詳しく教えてください。
- 建築の室内や都市における熱、光、音、空気質などの環境を把握したり、どのように設計すればよいかを考えることが基本としてあげられます。具体的には壁を熱がどう伝わるかといったことや、人と環境との熱のやりとり、どんな照明を快適と感じるか、どんな音を不快と感じるのかといった、生活の中でみなさんがあたりまえに感じていることを数値などで客観的に表現、理解し、デザインにいかしていこうとするものです。従来、建築環境といった場合には空調や照明などエネルギーを使って快適な環境づくりを目指そうとするものでしたが、これからは様々な環境問題に対処することを考えながら、どう建築全体をデザインするべきかを考えることも重要だと思います。
- 具体的にはどのような方法があるのでしょうか。
- 太陽光発電やコージェネレーションシステムなどのように、設備を付加して良くしていこうという流れもありますが、風通しを良くしたり、ひさしやすだれ、よしずをつける、屋上緑化など建築的なデザインで解決できることも多いと思います。そういったものは自然のエネルギーを上手く活用する、受け身的に利用するということで「パッシブデザイン」とも呼ばれています。また、近年は山の荒廃が叫ばれていますが、地域の山の木を使って家や施設を作ることも重要だと思います。そうすることで間伐などの手入れができるようになると、土壌も良くなり、いい木を育てることになるといった好循環を生みます。今、日本で使用される木材の約8割は輸入材ですが、伐採先の森林管理が十分でない場合もあるし、タンカーで運ぶことも環境に負荷をかけています。国産の木を使いながら、健康な山作りのシステムができればいいと思います。環境を考えるときに、建築単体で考えるのではなくもっと大きなサイクルが上手く回っていくことまで考えることが重要だと思います。
- 国産の木材を使えばシックハウスの問題も解決できそうですね。
- そうですね。住宅自体も木と土とせいぜい焼き物を使うくらいなら、壊してもすべて土に帰り環境に優しいですよね。そもそもシックハウスは、接着剤などの有機化合物を使った加工材を使用しているのが原因です。木は住宅の材料として使えるようになるまで通常50年かかります。日本の木造住宅は20~30年で建て替えることが多いのですが、材料の成長よりも速いペースで廃棄されています。しかし、もともと日本の住宅は何世代も住み継がれてきたものなのです。永く住めば廃棄サイクルも伸び、環境にもいいですよね。
- よく家は3回建てれば満足できる家が建つと言いますが。
- はい、家を建てるとき、準備に時間をかけた人やよく学習した人は満足度が高いというデータがあります。3回というのはそれだけ学んでから建てろということだと思います。最近は資金繰りや子どもの入学の問題などで施主も急ぐし、ハウスメーカーも早く建てることを煽る傾向があります。本当は1~2年かけてどういう家を作りたいかをじっくり考え、先の住まい方まで見越して建てるべきですね。そして施主自身が材料やデザインなどについても勉強すること。そうすれば満足度も高くなり、機能的にも使いやすく家の寿命も永くなると思います。家を買うという感覚ではなく、自分たちで作るという感覚で思い入れを持って建ててもらいたいですね。
- これからは木造住宅が見直されていくのでしょうか?
- もちろんコンクリート造や鉄骨造でしか建てられない建物もありますが、逆にコンクリート造や鉄骨造じゃなくてもいい建物もあります。たとえば、保育所や学校などは、木造でいいと思います。木造の方が温かみもあるし、子どもが落ち着くという調査結果もあります。森林が二酸化炭素を吸収してストックしているといわれますが、木造住宅も同じで木の柱や梁に炭素を固定化した状態で二酸化炭素をストックしています。だから街は第2の森でもあるのです。同じ1本の木を切って20年で灰にするのか、50年100年使って灰にするのとでは意味が違ってきます。仮に25年で灰にしてしまうと50年で木が1人前になるよりも早く炭素になるわけだから、空気中のCO2は増えてしまいます。逆に木1本が成長するよりも永く住むことにより、二酸化炭素を減らすこともできます。意識やライフスタイルを少しずつ変えていく事が大きな将来の環境の違いにつながっていくのではないでしょうか。

