造形学部 建築学科
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矢田 努 教授

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矢田 努 教授
建築計画学


ヤタ ツトム
東京工業大学卒業後、M.I.T.大学院博士課程修了、Ph.D。国連地域開発センター、環境デザイン研究所を経て現職。こどものあそび環境、空間行動、都市環境デザインについての研究を専門とし、日本学術会議委員などを歴任。

「建築計画」というのは、建築設計の前にする大切な仕事。例えば、どういう『利用目的』でどれくらいの『大きさ』の建物をつくるか決めなければいけません。しかもそれは、使いやすさや快適性、安全性といった、人の行動から導き出されます。さて、本学で建築計画の授業を担当する矢田先生は、そうした特色を持つ建築計画学を「不思議」のテーマで切ってみせます。「面白雑学」として、楽しく学ぶと良いとも。自らも雑学大好きの矢田先生。美術に音楽、旅行に写真と、趣味も多彩です。

授業をするうえで、テーマにしていることはありますか?
建築計画の授業では、特に『不思議』をテーマにした講義をしています。たとえば、〈人はなぜ学校の廊下で衝突しケガをするのか〉〈戸建住宅はどこまで近づけるのか〉〈科学博物館に来た人はなぜ満足するのか〉などです。子どもが空想の世界に飛び立つことのできる場所はどのようなところか、というのもあり、「ワープの空間」の不思議といっています。種あかしは少し難しいので、ぜひ授業の中で。でも、どれも、歩行線形論、個体距離論、満足空間論、建築規模の研究など、建築計画のまじめな研究テーマです。
先生が建築家を目指すことになったきっかけは、何だったのですか?
人と話し、関わり合う仕事をしたい、という気持ちがあったので、医者か建築家になりたいと思いました。今考えれば極端な選択ですね。でも、父が建築家なので、子どもの頃から当たり前のように「建築」の空気に触れていました。そのころから自然と決めていたのかもしれません。父の頃と比べると、もちろん今は技術的に大きく変化しています。でも、根幹は変わっていないように感じます。
変わらない根幹の部分というのは?
「手の感触」でしょうか。手の感触として形や空間を知るというのは、とても重要なことです。設計の仕事をするとき、建物の形をスケッチしながら、手近にある筆箱などをサッと取って「このへんにはこういう高い物が欲しい」と図面の上に立てたりしながら、建物の実際の形を決めていくことがあります。これは体感、いわば原始的な感覚のような部分で、時代を隔てても変わらないはず。授業の中で、手書きで図面を書くことを大切にしているのは、ひとつには、こうした感覚を体全体で覚えてほしいからです。
ところで、なぜ建築計画学は「雑学」なのですか?
「雑学」というのは、ある教科書に書かれていることです。構造計画学、設備計画学などの専門分野が分かれていった後に残ったのが建築計画学だそうです。しかし、そもそも、建築の計画の中には、社会性の強いものもあれば、個人的な好みに近いものもあります。建築家としてそれら幅広い価値観に応えるためには、自分の価値基準、そして経験を広げておかなければなりません。たとえばコンサートホールの設計を依頼されたとします。コンサートそのものを知らなければ、よいホールを計画できるはずがありませんね。オーケストラのコンサートがどんなものか、ピアノの発表会がどんなものか。演奏者、客、そこで働くスタッフなどの人の動きが実感としてイメージできなければ、本当にいいホールは設計できないでしょう。ですから、日頃から、どんな話にも対応できるように関心を広げておきたい。さらには、何にでも好奇心を持って、自分でも楽しんでしまうとよいでしょう。これが「雑学」。
ちなみに私は、博物館・美術館、特に子ども博物館の研究をしていますが、自分でも博物館・美術館に行くのが大好きです。音楽も好き。学生のころヨーロッパに一年間いて、いい機会だからと主要なオペラハウスにはほとんど通いづめでした。BGMはクラシックのオペラ。旅行にもよく出ますが、何といっても今一番の趣味は「写真」ですね。横浜に住んでいたときには、自分が住む南区の街を写真と文章で紹介する『街・人の万華鏡』という本を作ってしまったほど。建築を志す人には、どんな小さなことでもいいので、好奇心を持ち続けて欲しいと思います。
最後に、先生から学生へのメッセージをお願いします。
「計画」というのは、決めること以上に、必要なときにはいつでも変えられるようにする「構え」ではないかと考えています。こうしたことを授業の中では、〈カニの家を設計するとしたら〉などの身近なたとえ話を交えながら説明しています。スライドをたくさん使い、教科書には書かれていない話ですから、授業に出なければ聴けません。建築を学ぶ人には、好奇心いっぱいでいろいろな知識を仕入れ、柔軟に考えられるようになって欲しい。どんな建物をつくるか話し合ううちに相手(施主)の固定観念をがらりと変えてしまえるような建築家を目指したいですね。

(ASU JOURNAL VOL.4(2003年3月発行)に掲載されたインタビューです)

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