造形学部 デザイン学科
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林 羊歯代 准教授

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林 羊歯代 准教授
西洋美術史


ハヤシ シダヨ
金沢大学大学院教育研究科修了。
訳書に『ドメニコ・ギルランダイオ』(東京書籍)、『ヴァチカンのミケランジェロとラファエッロ』(ミュージアム図書)、『トガ』(日本経済新聞社)がある。美術史学会、美学会、イタリア学会会員。

イタリアの寄木細工師フラ・ジョヴァンニ・ダ・ヴェローラがいた修道院に行ったとき、ここで死んでもいいと思った、というくらいにルネサンス期の寄木細工に惚れて、研究に打ち込んでいらっしゃる林 羊歯代准教授。先行研究が少なく、現存する作品自体が少ないため、研究を進めるには困難も多いらしい。趣味とは言えないと前置きしながらも、読書、映画鑑賞、時計、鉱物、車と幅広い分野に好奇心旺盛でいらっしゃいます。

イタリア美術史がご専門と伺っていますが、そのご経緯について教えてください。
イタリア美術史を専門とするようになったきっかけは、大学の指導教官がイタリア美術専門だったからです。本当はロシアの社会主義リアリズムをやりたかったのですが、当時まだロシアの美術史研究はあまり進んでおらず、卒論は論文を書く訓練のためなので、資料豊富な領域をと勧められました。今となってはイタリア美術を選んでよかったと思いますし、現在取り組んでいる「ルネサンス期のイタリアにおける木工師」というテーマはひじょうに興味深く、魅力を感じています。木工師は、祭壇画の額縁、聖職者が座る内陣祈祷席、家具調度品、扉などさまざまなものを作る職人。それらのなかには美しい寄木細工で装飾されたものがあり、とても惹かれます。寄木細工の技術がめざましい進展を見せるのはルネサンス期のイタリアにおいてです。ルネサンス美術と言えば、絵画や彫刻がクローズアップされがちですが、寄木細工に関してはまだそれほど深く研究されておらず、詳細が明らかになっていない部分がたくさんあります。
「ルネッサンス期のイタリアにおける木工師」を研究されるきっかけは何ですか?
額縁の歴史を調べていたときに、当時の木工師の役割がひじょうに重要であったことがわかり、興味を抱いたのがきっかけです。15世紀のフィレンツェには、小さな街の中に80以上もの木工師工房があり、多くの受容があったことが記録に残っています。建築模型も作っていたことから、木工師から建築家になる者もいました。寄木細工は木工師の仕事のひとつですが、気の遠くなるような細かい手仕事です。黙々と小さな木片と格闘している姿は、他から見れば、どことなく滑稽に見えたらしく、寄木細工師をちょっぴり小馬鹿にしたような記述もあります。そのあたりも、私にとっては興味深いですね。
それに、なにより寄木細工そのものの魅力に取り憑かれたことも、この研究を始めるきっかけでしょうか。15世紀のイタリアで制作された寄木細工の魅力は、パースペクティヴをうまく使って、みごとな空間のイリュージョンを生み出している点だと思います。もちろん木の色をしているので、絵画によるだまし絵の効果とは別のものです。また、キリスト教や人文主義に基づく象徴性を背景とした、書物、祭具や果物など静物をモティーフとしたものもあります。なによりそこに満ち満ちている、静謐で知的な雰囲気に魅せられます。
研究資料が少ないという点では大変ですね。
一気に最盛期を迎え、急速に衰退していった芸術ですから資料、史料ともに少なく、その道の権威もごくわずかです。逆に手つかずの部分が多いテーマだからこそ追究してみようという意欲もわいてくるのですが、そうとうに苦戦しています。現地調査が必要であっても、実際にはよくて年に1度行けるか行けないかですから。ただ好きだから続けていられるのでしょう。今調べているフラ・ジョヴァンニ・ダ・ヴェローナの軌跡を、じっくりと緻密に追いたいですね。
学生にはどんな授業をされているのですか?
西洋美術史を中心に 色彩学なども指導しています。ここに入ってくる学生たちはみな美術が好きなのでしょうけれど、美術の歴史を学ぶとなると、とたんに「歴史は苦手、暗記ものはダメ・・・」という反応を示すひとが多い。これだけはなんとか取り除いて、美術に接する、ほんとうの楽しさを伝えたいと思っています。また、「そんな大昔の美術を知って何の役に立つの?」という問いもけっこうあります。デザインや建築の課題に追われる彼らにとって、過去の美術と現在の自分たちの接点を見つけるのが非常に難しくなっているのかもしれません。そういえば最近読んだ、ある雑誌のエッセイにこんなことが書いてありました。人文学はいったい何の役に立つのかという問いかけに対し、それは直接的に世のなかの役に立つことはないが、われわれは「考える力」「生きる力」を養うことができる、というのですね。学生たちの制作活動を見ていると、たまたま身近に存在しているものに、かなり影響されているのを感じます。なぜ今現在そういう形になって表れているのか、じっくり考えることがない。人はどういうときにどのような形、イメージを求めるのか、過去に遡って見ることは大切です。頭のなかにそうしたイメージのストックがあれば、今とこれからの時代が求める形やイメージを考え、創造していく可能性も拡がります。そうしたことについて講義を通して伝えていきたいと思っています。
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