飯田 隆彦 教授

飯田 隆彦 教授
プロダクトデザイン
- イイダ タカヒコ
- 京都市立美術大学美術学部工芸科卒。
トヨタ自動車デザイン部にて自動車のエクステリアデザインとCAD開発に従事。トヨタグループが運営する、産業技術記念館副館長を経て現在に至る。
「これ、学生がつくったんですよ」と見せていただいたのは、球体のコンピュータやまん丸の懐中電灯。ものをつくるということは、求められる機能を取り入れながら、いかに新しい形で提案できるか、ということ。ヒラメキとか豊かな発想こそ学生たちに求める最重要ポイント、と語る飯田教授のお話は、まさにいまのデザイナーに必要な、どのようにして“考える力"を磨くか、がテーマとなりました。

- 先生の研究テーマである“新デザインプロセス"とはどういうものですか?
- 例えばある商品の企画をスタートするとします。そうすると、市場を見ながらコンセプトを固め、機能やデザインを決め、製造段階に入り、ようやく完成して出荷するまでにはかなりの時間を必要とするわけです。現在、デザインという視点で商品開発を考えると、ほとんどがコンピュータを駆使して行われています。この道具をいま以上に有効に使い、企画・開発から完成までの期間をもっと短くすることができないか。また、デザインの可能性をもっと多角的に検証しながら進めることはできないか。そうしたことを追究するのが私の研究テーマである“新デザインプロセス”なんです。
- まさにいま必要とされている領域の研究テーマですね。
- コンピュータの力は、学生たちに講義をしていると計り知れないものを感じます。例えば、CAD/CAMのソフトを使うと、専門知識をそれほど学んでいない2年生でも立体作品を短時間につくることができます。これは、ひと昔前なら考えられなかったこと。しかも、画面上で試行錯誤し、ベストなデザインを取捨選択しながら創造できてしまいます。逆に言えば、つくるための時間が短縮でき、考え、発想することに多くの時間を費やすことができるわけですから、頭を使うことがますます重要になっていきますね。
- 先生は、自動車メーカーで車のデザインを担当していらっしゃいましたね。
- 1964年に大学を卒業してトヨタ自動車(株)に入社し、すぐに開発途上だったカローラのデザインを担当することになりました。当時はパブリカという大衆車が人気を集めていましたが、時代を経てさらにひとクラス上の車を社会に提案したい、という戦略のもとにこの車の開発が進められていました。もちろん、コンピュータなどあるわけがなく、原寸で図面を引きながらモデルをつくっていくということを行っていました。その後20年間カローラの開発に携わることになるのですが、本格的にコンピュータを使ってデザインしはじめたのは1980年代に入ってからですね。コンピュータの導入は文字通り革命的な出来事で、いままでデザイン上で不都合が生じると、原寸の図面を書き直していたものが画面上で修正できる。時間の短縮が可能になった分、考えることに時間が使える。まさにいま研究しているテーマの原体験がここにあるのです。
- 大学で教鞭を執ろうと考えたきっかけは何だったのですか。
- 企業の現場で実践してきたことを、学生たちに伝えてほしい。大学から言われたその言葉が、私に決心をさせました。車のデザインにずっと携わってきたキャリアをプロダクトデザイン、しかもその制作過程で役立てることができそうだと考えたのです。企業で求められるのは創造性と独創性。他社がまだ手を出していない領域を、いかにして攻めるかがポイントになります。それだけに発想の豊かさ、確かな思考力が必要になります。いま私がやりたいのは、ヒラメキとか創造力を育てるためのメソッド開発。社会に出て活用できる方法論を学生たちに伝えられたら、と研究しはじめています。これも実は、トヨタのデザインチーム内で実践していたことを発展させたものなんですよ。

