木村 光 准教授

木村 光 准教授
プロダクトデザイン、構成

スズキ ヴェルデ 試作車
- キムラ ヒカル
- 東亜大学大学院 総合学科研究科デザイン専攻修了。スズキ(株)を経て現在に至る。スズキ社長賞、通産省Gマーク受賞。日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)中部ブロック役員、日本デザイン学会評議員。
「スズキセピア」や「スズキヴェルデ」をはじめ、スズキ株式会社勤務されていた時代には数々の名車を生み出し、各種の賞にも輝いている木村准教授。25年間で40車種をデザインし、プロダクトデザインの分野では常に第一線で活躍。豊富な現場経験をもとにしたより具体的なアプローチは、学生からも支持されています。「美しさはもちろん必要かもしれないが、使って価値のあるデザインであるべき」と熱く語る木村先生に、これまでのご経験やプロダクトデザインの魅力などについてお話を伺いました。
- プロダクトデザインを志したきっかけはなんですか?
- 小学校の低学年から粘土いじりとかモノを作ることは好きでした。そのころはまだ工業デザインという職業があることは知りませんでしたが、そういう分野にはすごく関心がありました。たとえば学校のグループワークの時間には、車の模型や駅のプラットホームなどを提案して威張っていた記憶があります。小学4年生から油絵を描かせてもらったのがきっかけとなり、美術系にも惹かれて高校2年まで続けていましたが、プロをめざすほどの才能はないと思い、結局大学は好きなデザイン科へと進むことになりました。その後、スズキに就職し、念願のモーターサイクルのデザインをすることに。仕事は楽しくやりがいもありましたが、デザイン室というのは非常に無味乾燥で、四季を感じることができないことに寂しさを感じるようになりました。もちろんそれだけが理由ではありませんが、教職の免許もとり、大学からも声をかけていただいたので、こちらで教えることになりました。
- プロダクトデザイン分野の魅力とはなんですか?
- 学生にも言っていることですが、やはり人に使っていただく喜びがあることでしょう。絵画や彫刻と違って鑑賞物ではありませんから、使っていただいて初めて価値があるわけで、逆に使っていただくことで評価されるということも言えるわけです。ですから当然、自分の作ったものは常に追跡調査をしますし、新たに作る際には事前調査も必要です。スズキ時代はヨーロッパでも東南アジアでも、国内では北海道から沖縄まで調査に出かけました。消費者の声は大事にしなければなりませんから。だからといって、消費者の声だけ聞いていればいい物ができるかというとそうではなく、そこには新技術や創意工夫、アイデアも必要です。
- 一生懸命生み出したデザインも商品化されなければ価値がないということですね。
- 25年間で40車種のモーターサイクルをデザインしました。いい商品を世に送り出すためには必ず競争が必要です。逆に競争がないといい物はできません。競争に負けると商品にならないので、お蔵入りになったデザインも数多くあります。スズキ時代は先輩であっても部下であっても競争となったら必死でした。会社では他のデザイナーに自分のデザインを見られるので、家で描いていたこともあります。グループでの制作は美談ですし、その効能もありますが、あくまで個々の集まった総合力と考えています。個々の力が弱ければ、グループで行っても弱くなります。ゼミも同じ。やっていることは異なりますが、一緒に集まって他人の意見を聞くことで、個々がよりよいモノを作り上げるための集まりと考えています。
- スズキ時代に多くの賞を受賞していらっしゃいますが、
印象深いデザインやエピソードはありますか? - スクーターの「スズキセピアZZ」です。当時の通産省グッドデザイン賞のほかに、会社でも賞をいただきました。安全性を配慮してハイマウントストップランプをつけたことが事故低減につながり、他社にはないアイデアとして評価されました。その後、他社にもすぐ取り入れられました。いいアイデアがあっても予算がなく断念し、アイデアだけ他社に譲るようなこともあって悔しい思いもしました。しかし小規模な組織であるがゆえに、1から100まで全部手がけることができたのは、逆によかったと思います。事前調査から、デザイン、モデル制作、ネーミング、色の決定まで、場合によっては、コマーシャルのオーダーまでできましたから非常に勉強になりました。
- 最後に、先生と同じ道を目標とする学生へのメッセージをお願いします。
- 失敗覚悟でいろんな事にトライしてほしいですね。特にこの分野は、体力や忍耐力、集中力がないとやっていけませんので、学生のうちに身につけるべきです。プロダクトデザインには、特にアイデアが必要です。たとえば車のデザインの場合、車ばかり調べるのではなく、広い分野に興味関心を向けてヒントを探るのがポイント。そのためにはインターネットに頼らず、常にキョロキョロすることも大切です。プロダクトデザインは芸術と経済と文化の融合です。芸術力のみならず、技術力や発想の豊かさを磨いてください。



木村光デザイン25周年活動より
