熊谷 正信 准教授

熊谷 正信 准教授
住環境デザイン、インテリアデザイン
- クマガイ マサノブ
- (伊)SCUOLA POLITECNICA DI DESIGN DI MILANO ID科卒。1989年世界デザイン会議、1994年世界インテリアデザイン会議実行委員。モノと空間と心のバランスを核としています。
建築からインテリアまで、人を取り巻くあらゆる住環境のデザインを手掛ける熊谷先生。95年開催の、世界インテリアデザイン会議では、各国のインテリアデザイナーと交流を深め、その親交は現在にもつながっています。今後は学生の交換留学も含め、世界へのネットワークをどんどん広げていきたいとのこと。業界の第一線で活躍するクリエーターとしての顔と、教育者としての顔を併せ持つ先生からのメッセージは「インテリアデザイン界を担う、若い世代への期待は尽きません。」と、前向きな希望に満ちています。
- 先生は世界インテリアデザイン会議で実行副委員長を務められました。特に印象に残っている企画は何でしょうか?
- 「絞りとインテリアのニューウェイブ展」というイベントが印象的でしたね。地元・有松絞りの作家とタイの陶芸作家とのコラボレーション企画ですが、ニューウェイブというだけあって、まだ誰もトライしたことのない新しい趣向を狙った企画でした。どちらも伝統産業ですから、国は違っても不思議な一体感があり、それでいて斬新でデザイン会議の目的のひとつには、これからのインテリア界を担っていく若い人をどう引き込むかがあります。どんどん新しいことに挑戦し、なおかつインテリアを通して世界とのネットワークを広げていってほしいですね。
- 先生は大学で教える以外にも、ご自身でデザイン事務所を経営していらっしゃいます。現場と教室とでは温度差を感じますか?
- 愛知産業大学で教鞭を執って感じるんですが、今の若い人たちはインテリアへの関心が高いですよ。しかし、どのように実践に活かしていいか迷っている。それは社会参加の仕方がわからないところからくると思われます。情報を的確に捉えきっていないという問題もありますね。大学にはタテの関係はあってもヨコの関係が少ないのが原因でしょう。しかし学生であっても、今後は社会と対等につながってもいいと思うのです。デザインをどのようにビジネスとして具体化していくか。経営とデザインとのコラボレーションとでもいいましょうか。大学在学中から、そこまで目を向けても早すぎることはない。それが私の教育の狙いでもあります。
- デザイン会議を通して、
とりわけタイのデザイナーとの交流が深まったとお聞きしていますが。 - 同じ仏教国として日本との関わりは深く、インテリアの製作拠点としても重要な位置づけにある国ですから。西洋から多くの文明を受け入れて、独自のデザイン文化を築いてきたのも特徴的。この会議をキッカケに、タイ王国インテリアデザイナー協会の理事長ともコンタクトを取りました。実際にお会いして、今後、若手デザイナーと教員と学生とが一丸となって交流していきたいという考えも伝えました。具体的には、2004年3月からデザイン学科の学生をバンコクへ連れて行く予定です。5つ星ホテルに匹敵するサービスアパートメントに宿泊し、まずは西洋と東洋が融合したデザインセンスと機能性を体感させる。そしてタイ(今回はアントンとチョンブリ)の村で展開されている「1村1品運動」の実際を見学します。これはひとつの村がひとつの製品をプロダクトしようという運動。村の伝統を産業と結びつけることで、経済力を高め、販路を拡大し、農村の人たちの収入を増やして貧富の差を縮めるのが目標です。実は第一回目の製品は既に市場に出回っていますよ。日本やタイの貿易振興会のバックアップも得ている。こうした運動は人との関わりの中で初めて根づくもの、交流を通して育てていくものなんでしょうね。
- 他にはどんなプログラムが予定されていますか?
- タイの大学生や現地のインテリアデザイナーとの親睦会も計画しています。その中には興味深い話もありましてね。タイでは産学交流の一環として、学生がショップを開き運営してるんですよ。自分がデザインしたものが、どう評価されるか。ビジネスと同じで、シビアですがやり甲斐のある世界です。起業家精神が問われますよね。こちらの学生もそこまで引っぱり上げるのが理想。きっかけは提供するから、教室を出てどんどん学んでほしいと。既成の枠に縛られず、自ら体験し、新しい視点でモノを捉えることがカギではないでしょうか。たとえば、こんな話もありました。タイにホテイアオイ科の植物が問題となっていて、このやっかいものを何とか有効利用できないかと。そこで、あるデザイナーの発案により、乾燥させて繊維を編んでバッグにした。人の手をさんざん煩らわせただけに丈夫さは折り紙つき。村で製品加工し、現金収入への道筋ができたんです。
- 最後に、先生が経営していらっしゃる会社についてお聞かせください。
- 「(有)イクス」は20年前、女性が自立できる場を提供したいという考えから設立しました。デザインとは、生活者の身の丈に合ったものでなければいけない。生活者の視点に立って初めて生まれるものなんです。当然、デスクワークだけでは成り立ちません。女性が学生時代を経て社会に出て、結婚し家庭に入る。たとえ10年間のブランクがあったとしても、そこに生活者としての経験と学習が蓄積されます。その大きな財産を、ビジネスに活かしていくべきでしょう。デザインとは、常に対人間ですから。仕事を通して、タイとの交流を通して、その思いを新たにしています。

タイ王国・インテリアデザイナー協会
理事長であるティナコーン・ルジナロング氏と。
若いデザイナーどうしによる国際交流を深めたいという考えで一致。
