松谷 主一 教授

松谷 主一 教授
プロダクトデザイン、家具デザイン
- マツガイ シュイチ
- 1968年東京芸術大学卒。
自動車、工作機械、テーブルウェア等のデザイン開発に従事。グッドデザイン中小企業庁長官特別賞受賞。日本デザイン学会会員。
シンプルでありながら機能を満たし、存在感もあって愛着のわくモノづくり。お話を伺っていると松谷教授のプロダクトデザインに対する熱い想いが伝わってきます。鮎釣りが趣味という教授はクリスチャンでもあり、日曜日は伝道や聖書の研究に費やしていらっしゃるそうです。神を信じ不正直や不道徳を避けるといった真摯な生き方は、学生への指導やデザインに対する思いにも通じているような気がします。

- これまでのご経歴についてお聞かせください。
- 高校時代はグラフィックデザインをめざしていましたが、大学へ入ってからはプロダクトデザインの方が自分にふさわしいと思い、卒業と同時に自動車会社のデザイン課に就職。大型トラックのデザインをやりたくてトヨタ車体に入社しましたが、まもなくトヨタ車体が大型トラックの生産をストップしたため4~5年で退社しました。その後デザイン事務所で多くのプロダクト製品をデザインしてきました。大きいものでは洗車機とか手袋編み機など。小物ではプラスチックを中心とした製品や関の刃物類、カップ&ソーサー等の瀬戸の陶器のデザインなどがあります。いろんなデザインを手がけてきましたが、自動車会社で培った知識や技術はその後の仕事にも役立ちました。それぞれに専門的な部分はありますが、基本は同じです。
- プロダクトデザインの基本というのは具体的にどんなことですか?
- プロダクトデザインの目的は、人の生活を快適にすること。つまり生活や商品などを観察して、要求とか問題点を健全な形に整えていくことがプロダクトデザインの基本であると思っています。健全な形といったのは、たとえばグラフィックデザインは広告宣伝であるためインパクトのあるプレゼンを必要とするが、プロダクト系はあくまで生活を支えるもの。だから人間のサーバント(召使い)でいい。自分としてはその域を出てはいけないと考えています。目立たなくてもいいから、健全な形に整えることをベースに、より良いモノ、魅力のあるモノを提案していくのがデザイナーの仕事であると考えています。
「インテリアデザインはすべてのデザインの原点であり、人類の主要な目的に直接関わる仕事である」と学生には伝えています。その裏付けとして「家族の、また家族生活の安全と向上こそが文明の主要な目的であり、あらゆる勤勉な努力の究極の目標である」という元ハーバード大学の学長、チャールズ・W・エリオット氏の言葉を引用して説明。この概念を押さえ、まず個々の生活をしっかり見据えていくことが最も大切であり、そこから要求や問題点を見つけ、その解を形に置き換えて提案していくというのがインテリア及びプロダクトデザインの仕事であると指導しています。 - 先生の講義の内容を教えてください。
- 建築インテリアコースで、2年生の最初に椅子を課題作品として作らせています。3年以降は家具やストリートファニチャーを中心にしたデザインの実習授業です。1年生に対しては、製図やプレゼンのための透視図演習の授業も担当。今はコンピュータが主流ですから、手描きは必要ないと思われがちですが、アイデアを出すときや形や空間を認識するためには、手で描けることが重要なスキルになる。絵の描ける人は、頭の中でも立体や空間を想像して構成することが容易だと思いますね。製図や透視図演習を学ぶことによって、空間や立体の内側や裏側を想像できるといった立体認識力を身につけることもねらいです。見えない部分の形を頭の中で考えることは、モノを作るという仕事には大切なことです。
- これからのデザイナーに要求されることはどんなことだとお考えですか?
- 人としてどんな生活が必要かということをまず考え、それをベースにしたデザイン、つまり本来の正道のデザイン提案がこれからは更に受け入れられていくと思っています。たとえば無印良品もそれに当てはまるデザインの一つ。シンプルで価格もリーズナブルという部分で、一つのモデルと考えていいと思います。デザイナーとしてはモダンデザインを基本としてその中で健全な生活に求められる提案をしていくことが必要。モダンデザインとはシンプルで無駄がなく、それでいて機能は十分に押さえられており、これみよがしの形も与えていない。そしてデザインの薫りがすること。一言で言えば最初に言ったサーバントであることです。今は差別化と称して不要な機能を盛り込みすぎ。企業としては欲望をあおらざるを得ないし、欲望を刺激して肥大化させてきた現実もありますが、デザイナーの本来の仕事はそうではないと思います。また、地球資源の危機や自然との共生が叫ばれていますが、これからの時代は環境も視野に入れてデザイナーとしてなにができるかを考えていかなければならない。愛着の持てるものを作れば、浪費は防げるし、消費感覚を変えていきます。ひいては地球資源を大切にすることにもつながると思っています。

