大野 幾生 准教授

大野 幾生 准教授
彫刻(石彫)
- オオノ イクオ
- 東京造形大学造形学部美術学科卒。
シリーズ「思考する時間」、「思考する樹木」、「風のすみか」を制作。2000年Mississauga・citygallery「思考する時間-湖上の波影-」。国画会会員。
いつも誰かしら学生がいて、人気の途絶えることのない大野先生の研究室。訪ねてみると、ホワイトボードに貼ってある楽しい写真、本棚に並ぶバラエティに富んだ本など先生の遊び心が伺える物たちでいっぱいです。思わず居すわりたくなるというのも納得。普段は気さくで人気者の大野先生ですが、教育に関しては独自の論を持ち『失敗することが大切』『苦しい努力はしないでくれ』と声を強める一面も。そうした言葉の背景には、一体どんな想いが込められているのでしょうか。
- 今、先生が学生に教えている教科は何ですか?
- デザインベーシックとスタディスキル、基礎ゼミナール、大学院の生活造形基礎です。 デザインベーシックでは、制作することの楽しさやものづくりの考え、それ以上にじっくり腰を据えて取り組むことの大切さや充実感を体験し、納得のゆく制作姿勢を見につけて欲しいと願っています。スタディスキルは大学で学ぶことの意味やその方法を教えています。私はこの両方の科目を教えることを通して、学生の不得意な部分を強化できるよう学生にアドバイスを与えています。
- そのほかに、大野先生オリジナルの教育方針はありますか?
- そうですね。僕の研究室のコンセプトは『勉強はしないでください』なんです。苦しい努力をすることほどツライものはない。端から見ていて苦しくなるような努力はして欲しくないんです。でも、好きなことなら人は何だって頑張れる。『楽しく頑張る』ならOKなんです。楽しみながら自分で自分を育てる、それが教育の原点ですよね。僕は『遊び』=『学び』だと思っています。だから何に対しても遊び心を発揮したくなるんですね。
- その『遊び心』を学生に伝えたいというわけですね。
- 時代の流れの中で今の教育は、先端技術を教えることに追われている気がします。でも、それは教育ではなくて技術指導ですよね。僕は芸術を通して、手作業を通して、人を育てていきたいと思っているんです。そういう人材を、どんどん社会に送っていきたいと思っています。彼らの仕事について言えば、遊び心のないデザイナーなんて、僕に言わせればデザイナーじゃない。職業としてのデザイナーを育てるのではなく、人間としてのデザイナーを育てていければと思っています。
- 先生の研究室には、卒業生もよく訪ねてくるという噂を聞きましたが。
- そうですね。訪ねて来る子もいれば、趣味で作った絵本を送ってくる子もいますし、デザイナーとして仕事に就いている子が直接ゼミで話を聞かせてくれたりもします。僕の授業よりずっと説得力があるんですよね(笑)。でも、僕は彼らに「世の中にデザイナーは溢れるほどいるから、アイデアが枯渇したら続けるのは難しいよ」と厳しいことを言います。自分で思考を展開できる能力を持っていれば、つまり柔軟な発想と遊び心を持っていれば、時代の波に関わりなく生き残ることができるよ、とも言うんです。そういう人であるために、僕の研究室では『失敗』や『遊び心』を大切にしています。あっと驚くような遊び心のある学生に、もっとたくさん出会えたら幸せだなぁ。

「思考する時間-懐-」および「庭園」
(ASU JOURNAL VOL.4(2003年3月発行)に掲載されたインタビューです)
