造形学部 デザイン学科
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大野 幾生 准教授

大野 幾生の写真
大野 幾生 准教授
彫刻(石彫)


オオノ イクオ
東京造形大学造形学部美術学科卒。
シリーズ「思考する時間」、「思考する樹木」、「風のすみか」を制作。2000年Mississauga・citygallery「思考する時間-湖上の波影-」。国画会会員。

いつも誰かしら学生がいて、人気の途絶えることのない大野先生の研究室。訪ねてみると、ホワイトボードに貼ってある楽しい写真、本棚に並ぶバラエティに富んだ本など先生の遊び心が伺える物たちでいっぱいです。思わず居すわりたくなるというのも納得。普段は気さくで人気者の大野先生ですが、教育に関しては独自の論を持ち『失敗することが大切』『苦しい努力はしないでくれ』と声を強める一面も。そうした言葉の背景には、一体どんな想いが込められているのでしょうか。

今、先生が学生に教えている教科は何ですか?
教職課程の科目と彫刻です。前期(1年生)では「塑像」といって、粘土で首を造ります。これは立体を把握することを学ぶための授業。そして後期は、その続きとして「木彫」をやります。こちらは、デザイナーとしての空間感とか立体感を養うための授業です。ところで僕の研究室で実際にしていることをお話ししましょうか。これは僕の教育方針というか、ポリシーでもあるのですが『失敗させること』を一番大切にしているんです。ちょっと人が悪いかもしれませんが、わざと失敗をさせるように仕向けることもあるんですよ。たとえば、ブロンズのドアノブの型取りという課題を出したとします。学生は一般的に考えて、石膏を使って型を取ろうとする。「先生、これでいいですか?」と聞いてくるので、僕は「いいねぇ」と答える。でも実は、石膏では学生の技術レベルでは100%できないんです。学生は手間暇かけて一生懸命作りますが、結局は「先生コレできなかった」と報告に来る。そこでやっと「本当はシリコンという素材で取ると一発で取れるんだよ」と正解を教えるんです。学生からは『ペテン師』と、言われています。
なぜ、わざと失敗させるのですか?
物の考え方や展開のさせ方を体得してほしいからです。先の例で言えば、失敗したからこそシリコンという材料があることを知り、また、違う素材を使うことに伴って、準備や道具を使い分ける必要があることも判る。なぜ失敗したのか、どうすれば失敗しなかったのか、失敗したら次はどうすればいいのか、を分析するうちに、物事を筋道だてて考えることができるようになり、どんな事態にも冷静に対応できる柔軟さが身に付く。だから、わざと失敗させるんですね。考える力を身につけておけば、いざ実社会に出たときにも強い。展開・企画力に通じる部分ですからね。
そのほかに、大野先生オリジナルの教育方針はありますか?
そうですね。僕の研究室のコンセプトは『勉強はしないでください』なんです。苦しい努力をすることほどツライものはない。端から見ていて苦しくなるような努力はして欲しくないんです。でも、好きなことなら人は何だって頑張れる。『楽しく頑張る』ならOKなんです。楽しみながら自分で自分を育てる、それが教育の原点ですよね。僕は『遊び』=『学び』だと思っています。だから何に対しても遊び心を発揮したくなるんですね。
その『遊び心』を学生に伝えたいというわけですね。
時代の流れの中で今の教育は、先端技術を教えることに追われている気がします。でも、それは教育ではなくて技術指導ですよね。僕は芸術を通して、手作業を通して、人を育てていきたいと思っているんです。そういう人材を、どんどん社会に送っていきたいと。彼らの仕事について言えば、遊び心のないデザイナーなんて、僕に言わせればデザイナーじゃない。職業としてのデザイナーを育てるのではなく、人間としてのデザイナーを育てていければと思っています。
先生の研究室には、卒業生もよく訪ねてくるという噂を聞きましたが。
そうですね。訪ねて来る子もいれば、趣味で作った絵本を送ってくる子もいますし、デザイナーとして仕事に就いている子が直接ゼミで話を聞かせてくれたりもします。僕の授業よりずっと説得力があるんですよね(笑)。でも、僕は彼らに「世の中にデザイナーは溢れるほどいるから、アイデアが枯渇したら続けるのは難しいよ」と厳しいことを言う。自分で思考を展開できる能力を持っていれば、つまり柔軟な発想と遊び心を持っていれば、時代の波に関わりなく生き残ることができるよ、とも言うんです。そういう人であるために、僕の研究室では『失敗』や『遊び心』を大切にしています。あっと驚くような遊び心のある学生に、もっとたくさん出会えたら幸せだなぁ。

「思考する時間-懐-」および「庭園」の写真
「思考する時間-懐-」および「庭園」
(ASU JOURNAL VOL.4(2003年3月発行)に掲載されたインタビューです)

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